金型クリーニング材タブレット生産性向上プロジェクト

半導体パッケージ向けの成形部品を製造する際、使用した金型に残った汚れを除去するために、日本カーバイド工業が開発したのが主にメラミン樹脂をベースとする「半導体用金型クリーニング材」である。この製品は半導体業界では今や欠かすことのできない存在であるが、コスト高に悩まされる中でも売価を維持し、市場競争に打ち勝つため、化成品事業部では製造現場に対し生産性向上を要請。これに対して生産技術センターの辰巳博徳と東海宏は現場の最前線に立ち、従来の品質を担保しつつ生産スピードをアップするというチャレンジを開始した。

スピードアップのカギは?

富山県の早月工場で生産する半導体用金型クリーニング材(トランスファータイプ)は、チョークのような円柱の形状(タブレット)をしており、使用する金型のタイプによってさまざまな径、高さを持つ。タブレットはタブレット打錠機という機械を使って製造する。打錠機には多数の穴が並び、その穴に原料となる紛体のメラミン樹脂を次々と充填。上下からプレスを加えることでチョーク状の製品が作られる。理論的には充填するスピードを上げるほど生産性が高まるが、スピードを上げると、規定通りの量が投入できなくなるケースが発生する。事業部からの生産性向上の要請を受け、辰巳らは数年前からこの難題に取り組んでいたが、思うような成果が得られないまま目標達成の期限が近付いていた。

待ったなしの状況に強力な助っ人参上

事業部からの生産性向上の目標値は現状の130%アップ。それまで仮に1分間に100個作っていたとすると130個に増やす必要がある。サイズによって2倍3倍にすることが可能なものもあれば、スピードアップが困難なタイプもある。それぞれの生産量もまちまちなので製品ごとにベストの条件設定を追求し、トータルでこの数値を達成することが求められる。
20XX年5月、辰巳には改善の方向性が見えてきていた。しかし、待ったなしの状況の中、アイディアを持ち一緒に効率的に作業を進める仲間を必要としていた。「それなら東海しかいないな」と部門長の富川が判断すると、あっという間に東海のプロジェクト加入が決まった。辰巳が求めたのは時間が限られている中で現場のメンバーと一緒に汗をかきながら、新しい知識を吸収し、さらにそこに新たな改善のアイデアを投入していける人材。東海の起用は若手ならではの斬新な発想力と行動力に期待してのことだった。

タイムリミットが迫る中で最適の解を探す

東海は初めてのプロジェクトへの参加に心躍らせた。連日現場に足を運んで製造プロセスをつぶさに観察、理解し、生産効率アップのためにどこをどう改善すればいいかの分析を開始。やはり最終的には、タブレット打錠機の速度アップを目指し、生産スピードを上げながら規定通りの量の原料を充填すること。そのためには原料の流動性を良くし、いかにサラサラの状態を保てるかがカギとなることがわかった。原料は空気中の水分を吸ってベトベトとして固まったり、付着してしまったりすることもあるようだ。一定の流動性を確保し、充填スピードアップに対応するには、季節ごとの湿度の変化も考慮しなければならず、実際にやってみなければわからない部分も多かった。東海は現場の協力を得ながら実験を繰り返し、最適解を探る作業が続いた。