レーザーマーキングラベル開発プロジェクト ”超・ケミカル”のアプローチで製品化への突破口を見出す

車輌識別番号(Vehicle Identification Number略してVIN)をご存じだろうか。自動車業界で個々の車両を識別するために車内に表示する一種のシリアルナンバーで、主に盗難車や欠陥車、事故車を見極めるために利用される。そしてこのVINを表示する専用ラベルとして使用されるのが「レーザーマーキングラベル」だ。これまで表面が黒、赤、黄、シルバーのものを発売してきたが、製造上の問題から白色のものは未だに製品化されていなかった。立ちはだかる課題を克服し、白色のラベルが誕生するまでのプロセスを探った。

文字が消えない、剥がせない、魔法のフィルム

レーザーマーキングラベル『ハイエスカルAXシリーズ』は、自動車などの車輌識別番号のほか、建設機械の製造表示、製品銘板などに使用する、改ざん防止機能を持ったラベル状の製品である。異なる色のフィルムを二層に重ね合わせた構造になっており、レーザービームで一層目を削り、二層目を視認させることで情報(文字やイラストなど)を表示する。インクを使用しないため、印字された情報を半永久的に表示し続けることができるのが特徴。また剥がそうとするとフィルムが割れて、改ざんや偽造などの不正改造を防止する機能を持つ。さらに貼付後、熱帯など苛酷な環境下でも優れた耐久性を発揮する。2011年4月、仲田翔吾は、この製品を開発していた機能フィルム開発研究部に新人として配属された。当時はまだ自分が経験したことのない大仕事をやってのけるとは想像だにしていなかった。

究極のジャストインタイムを実現

もともとレーザーマーキングラベルの開発は2004年頃からスタート。30年以上前から単層で上から印刷するタイプのフィルムはあったが、印刷工程を別工場で行うため、どうしてもタイムラグが生じていた。そのため、お客様から「その場で印字できて確認できる方法はないか」という要望があった。技術的にはすでにレーザー加工による印字のノウハウは社内に存在していたため、すぐさま製品化の作業が進められた。現在のチームリーダーである京田智はこう語る。「現在の2層式のレーザーマーキングラベルだとクルマの生産ラインの横でもフィルムを加工でき、一枚一枚その場でラベルを作成し、その場で確認することができます」。印刷を外注した場合、貼り直しを見込んだ発注が必要になり、コストアップに繋がる。その点、レーザーマーキングラベルは「究極のジャストインタイム」を実現、着実に市場での支持を確立していった。

立ちはだかる「白」の壁

仲田は新人研修後すぐ、本プロジェクトの前任者からお客様と直接やりとりのある開発現場の担当を引き継いだ。通常、対人交渉の少ない業務を経験後、対外的な業務に関わるものだが仲田の場合はいきなり最前線の現場に立つことになった。現場では「白いフィルム」の開発という新たな課題が浮上していた。それまでは黒、赤、黄、シルバーの4色があったが、家電・電機をイメージした屋内向けの用途から、銘板など屋外での用途まで「白」を望む声が少しずつ増えてきていた。しかし、白のフィルムは光や熱に弱く、黄色に変色してしまったり、耐候性試験でもすぐに劣化するため、非常に難しいテーマであり、他社も開発を見送っているケースが多かった。もちろん先輩たちは何度となく「白」の壁に挑み、化学的プロセスを中心に検討を重ねていたが、約2年間かかっても期待に沿うような成果を得ることはできずにいた。そしてやはり仲田も目には見えない大きな壁にぶち当たることになった。