レーザーマーキングラベル開発プロジェクト ”超・ケミカル”のアプローチで製品化への突破口を見出す

車輌識別番号(Vehicle Identification Number略してVIN)をご存じだろうか。自動車業界で個々の車両を識別するために車内に表示する一種のシリアルナンバーで、主に盗難車や欠陥車、事故車を見極めるために利用される。そしてこのVINを表示する専用ラベルとして使用されるのが「レーザーマーキングラベル」だ。よりセキュリティ性(改竄防止性、偽造防止性)を高めるため、表面にロゴを入れてほしいとお客様から要望があった。既存の製品にロゴを追加するだけなのですぐに開発できると考えていたが、ロゴを追加するだけでも大きな問題が発生した。立ちはだかる課題を克服し、ロゴ入りレーザーマーキングラベルが量産化するまでのプロセスを探った。

文字が消えない、剥がせない、魔法のフィルム

レーザーマーキングラベル『ハイエスカルAXシリーズ』は、自動車などの車輌識別番号のほか、建設機械の製造番号表示、製品銘板などに使用する改ざん防止機能を持ったラベル用の製品である。異なる色のフィルムを積層させた構造になっており、レーザービームで表層を削り、下層を視認させることで情報(文字やイラスト、二次元コードなど)を表示する。インクを使用しないため、印字された情報を半永久的に表示し続けることができるのが特長。また、剥がそうとするとフィルムが割れて、改竄や偽造などの不正改造を防止する機能を持つ。さらに貼付後、熱帯など苛酷な環境下でも優れた耐久性を発揮する。2015年4月、工藤俊平は、この製品を開発していた研究開発センター フィルムグループに新人として配属された。当時はまだ自分が経験したことのない大仕事をやってのけるとは想像だにしていなかった。

究極のジャストインタイムを実現

もともとレーザーマーキングラベルの開発は2004年頃からスタート。30年以上前から単層で上から印刷するタイプのフィルムはあったが、文字などの印刷工程を別工場で行うため、どうしてもタイムラグが生じていた。そのため、お客様から「その場で印字できて確認できる方法はないか」という要望があった。技術的にはすでにレーザー加工による印字のノウハウは社内に存在していたため、すぐさま製品化の作業が進められた。現在の複層式のレーザーマーキングラベルだと車の生産ラインの横でもフィルムを加工でき、一枚一枚その場でラベルを作成し、その場で確認することができる。印刷を外注した場合、貼り直しを見込んだ発注が必要になり、コストアップに繋がる。その点、レーザーマーキングラベルは「究極のジャストインタイム」を実現、着実に市場での支持を確立していった。

入社2年目で現場の最前線へ

工藤は新人研修後すぐ、本プロジェクトの主担当である先輩の下でOJT研修を受け始めた。OJT研修では先輩の仕事を近くで見ながら、実践的に仕事を学ぶことができた。数ヶ月が経ち、工藤は「2~3年かけて自分が担当する範囲を広げていき、できるだけ早く一人前の研究者になりたい」と思っていた矢先、先輩が退職することが決まった。通常、対人交渉の少ない業務を経験後、対外的な業務にステップアップするが、工藤の場合は入社2年目にしていきなり開発現場の最前線に立つことになった。ロゴ入りレーザーマーキングラベルの開発では、「ロゴを印刷した塗工基材にフィルムを製膜後、塗工基材を剥離することで、ロゴがフィルムの中に埋め込まれる」という処方でお客様の承認をいただいたが、この製品を量産する段階になって工藤は担当を引き継ぐことになった。その時、開発現場では『塗工基材とフィルムの剥離バランス』が問題として浮上していた。塗工基材とフィルムの剥離力は絶妙なバランスが求められ、剥離力が小さ過ぎると製膜時にフィルムが剥がれてしまい、剥離力が大き過ぎると塗工基材からフィルムを剥離することができないという難しい問題に工藤は直面することになった。