海外ステッカー工場立上げプロジェクト

垂直立ち上げの成功で社長賞を受賞

現地の日本人は当時2名、実際に工場建設に携わるのは全員ベトナム人だ。仕事に対する価値観の違いなどマネジメントの難しさもある。工事の監督は基本的に現地人の管理者に任せているが、なかなか配慮が行きとどかないケースもある。例えばクリーンルームの状態を保つために壁をカバーして、内側から連続的に圧力をかけて外の塵が入らないようにしているが、少し目を離すと作業ルールを無視して進める場合もある。現地人同士でミスを指摘しあうことも少ないため、大きな事故につながらないよう、日本語で声を荒げて注意をすることもある。さまざまな苦労を重ねながらどうにか生産をストップすることなく工事は完了、通常、機械を稼働させるのに1ヵ月以上かかるものだが、トラブルもなく垂直立上げを実現した。期限内にリニューアル工事を終えられたことが全社的にも評価され、社長賞が授与された。工場が稼働した時、工場が会社の利益に貢献していると確認できた時、現場のスタッフと成功体験を共有できた時は苦労を忘れる瞬間だ。

「ゼロ」からの工場立ち上げ

濱田は今、インドでの工場立上げに奔走する。プロジェクトに着手したのは2011年の秋。場所はニューデリー市から北西2時間ほどのハリアナ州ロータック工業団地。数人の視察メンバーで土地を見て「ここにしましょう」と決めた。広さ約210m×90mのエリアで2013年3月の完成を目指し着々と工事が進んでいる。濱田は2012年夏から現地に赴き、工場建設を見守っている。ゼロからの工場立ち上げのため、技術的な問題以前に自分の衣食住など生活環境を整えることからのスタートだった。現在、2輪メーカーへの営業活動も本格化、インド工場のキックオフに向けて着々と準備が進んでいる。

大切にしている三つのこと

工場を立上げる際、濱田が大切にしていることが三つある。一つ目は「作る立場ではなく、使う立場を考える」こと。単に言われたままの仕様ではなく、メンテナンス性や省エネ性など生産技術に関わる部分を意識し、作業を進めることである。実際、クリーンルームの状態を日本から24時間365日把握できる機能があればより良くなると考え、新たな仕様としてラインに組み込み、常に正常な状態を保てるようにしたケースもある。
二つ目は「予算の範囲内で常に世界一の工場を目指した設計をする」こと。これは自らが携わった生産プロセスのどこかに世界一を誇れるような技術を盛り込んでいくことである。 以前セラミック基板のラインにおいての計測機器部分を担当した際、世の中のどこを探しまわっても納得のいく機械が見つからないことがあった。その際、世界一のプロセスを実現したいという思いから、自分たちの手で計測器自体を「一から」作りあげたこともある。
三つ目は「現地スタッフ・現地業者との良好なコミュニケーションの構築・維持に努める」こと。「入社当初に自動の検査器を作ってタイの工場に納品したことがあるのですが、10数年してたまたま同工場を訪れる機会があり、自分の作った機械が横展開され、何十台も並んでいた時は本当に感激しました」(濱田)。こういった事例も現地スタッフとの密接な関係性があるからこそ、実現ができているのである。

専門の枠を超え、世界に飛び出せ

海外での仕事の醍醐味について富川は「国内のようにしがらみに捉われることなく自分の手で事業を回せることですね」と語る。「自分で現地のゼネコンを調査して回り、発注先を決め、工場建設、市場開拓まで任されました。」中国の恩希愛(杭州)化工有限公司を設立した際も工場立上げ、現地製造スタッフ教育、さらには営業本部長としてゼロから中国市場での反射シート市場開拓のため中国全土を回るなど精力的に活動を展開した。「自分で作って、教育もして、ゼロからの市場開拓に挑戦するのは非常にやりがいのある仕事でした。」(富川)。最後に富川が次のように結んだ。「私たちはグローバルに活躍できる人材を求めています。そのためには専門ももちろん大事ですが幅広く学ぶことが大事です。自分の専門以外にもうひとつ得意な分野を作ることにチャレンジしてほしい。あとはやはり実際に現場で手を汚し、触ってみないと何もわからない。現場、現物、現実、原理、原則の5ゲン主義が大事。現場を知った上で各生産工程の機能が『何のためにあるのか』を本質的に理解し、最終的には機能そのものを自ら描ける人を目指して欲しいですね」(富川)。

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