液晶TV用バックライト向けLEDパッケージ開発プロジェクト

低電力・長寿命で“次世代の明かり”として普及が始まっているLED。このLEDの特長をより一層引き出し、光の利用効率を高めたのが、日本カーバイド工業が独自に開発した高輝度・高反射のアルミナセラミック基板だ。主な用途としてはLED照明、液晶TV用バックライト、携帯電話用フラッシュライトなどがある。2009年にはある大手電機メーカーが社運を賭けて開発を進めていた新型液晶TV用バックライトに、日本カーバイド工業が提案したLEDセラミックパッケージ基板(以下LED基板)開発の採用が決定。ここではその開発プロセスを追っていこう。

独自開発のセラミック基板に大手メーカーが注目

日本カーバイド工業でLED基板の開発がスタートしたのは2005年頃。数年後にはアルミナを主原料とする高輝度・高反射のLED基板の開発に成功する。メーカー各社に紹介すると反響は大きく、2007年にはある大手メーカーから液晶テレビのバックライト用としてぜひ検討したいというオファーがあった。クライアントの要望は「高輝度・高反射率というセラミックの特性を活かして、しかもできるだけ製造工程は簡略に、できれば低コストで」というもの。北陸セラミックの河浦茂裕と井田誠は、何度かお客様のもとへ通ってはニーズを確認し、社内でのディスカッションを繰り返した。製造工程を簡略するにはどうすべきか?議論を詰める中で従来の構造を根本から覆す、新構造の基板の構想が持ち上がり、2008年5月の提案に向け準備を進めていった。新人の吉村将がプロジェクトに加わったのはまさにそんなタイミング。いきなり開発の最前線に放り込まれる形となった。

大手メーカーにも真似できない特殊構造を開発

「常識で考えると『これは無理だろうな』というのをやってのけましたね」と河浦は当時を振り返る。従来、LED基板として求められる機能を実現するには、無条件に多層構造であることが前提となっていた。基板は印刷で製造するが、最初の工程で印刷後、下層部分を別に作って貼り合わせるというのがそれまでの方法だった。これに対して河浦たちは1枚の板に印刷を施す途中で物質の機能を変えるような方法論を開発した。アイデアが出た時は、「ちょっと無理じゃないか?」「コスト的に難しいかもしれない」という意見もあったが、いろいろと検討を重ねていった結果、「これはいけるぞ」という目途がついた。アイデアが出て顧客に提案したのは2008年の5月で、その後も量産化に向けた検討を行った。その間、顧客側でも他の大手メーカーに同様の構造のものを要望したが、結局他社は「うちでは無理」と撤退していった。翌2008年12月、遂にモデルに新構造のパッケージを採用することが決定、社内でも1月から正式にLEDプロジェクトが発足した。

顧客も社運を賭けた一大プロジェクト

顧客は、業界でも立上げスケジュールの早さでは評判だった。2009秋モデルについて、量産評価サンプルの提出期限は5月、量産開始は7月と提示された。限られた時間の中で商品設計、製造方法、製造機械の開発を少数のメンバーで取り組んでいかなければならない。顧客の技術スタッフとも頻繁に打ち合わせを行い、計画が具体化していく中で、社内のプロジェクトへの注目度も上がっていった。顧客にとっても本案件が社運を賭けた社長直轄プロジェクトであり、それがさらなるプレッシャーとなった。河浦は自分が重圧に負けないためと、メンバーにプレッシャーを伝播させないよう、「苦しい時ほど明るく」を心がけた。そんな状況で2年目を迎えた吉村は、出荷直前の検査機導入関連の業務を一任されていた。2009年の1期の立上げに向けては納期厳守のため4機の検査機の導入をバタバタと決めたが、これについて納得がいかなかった吉村は「5号機以降もこのまま導入するのは絶対避けたい。自分の設計でやりたい」と河浦たちに直訴していた。