光学フィルム用粘着剤開発プロジェクト

評価データが合致しない。なぜだ?

1年がかりで完成させた基本設計をベースに、「もっときれいに剥がれるものを」「静電気の発生を防ぐものを」といった、顧客が求めるオーダーに対し、材料の変更や配合の調整を工夫しながら、微調整が続けられた。「特に苦労したのは、顧客と我々の評価結果が、一致しなかったことです」(鴨井)。試作品は当社でもちろん評価するが、並行して顧客でも実際にフィルムに粘着剤を塗工してサンプルを作成し、評価を行う。ところが乾燥条件や塗工方法が異なるため、当社と顧客の評価データが合致しなかった。宮崎と鴨井は、一緒にデータをひとつひとつ検証し、解析を行い、ようやく乾燥条件の違いに原因があることを突き止めた。「そこで解決策として、性能が乾燥に依存しない材料を選定し直すことで、評価結果が一致するようにしました」(鴨井)。その他、実際に製造を担当する工場側との連携にも気を配ったという。実際の製造現場には反応槽の大きさや、原材料を混ぜる釜の大きさ、夏と冬の気温や湿度の差など、さまざまな制約や条件の違いがある。そのため同じ処方でも違った特性が出てしまう可能性もある。「製品の設計をする段階から、常に製造現場の作業条件や作業効率のことを念頭に置いていました」(宮崎)。

自由に議論を戦わす『促進会議』とは?

今回のプロジェクトのように、設計を根本から見直すような新たな開発の場合には、試行錯誤はつきものといえる。予測とはまったく異なる評価データが出て、どこに原因があるのか見当がつかず、途方に暮れることもしばしばだという。「そんな時は、別の角度からデータを見直すことが重要です。一人の視点には限界がありますから、私もあえて鴨井とは違う角度から考えることを心がけました」(宮崎)。さらに促進会議と呼ばれる議論の場も、複眼的な思考を組み立てていく上で、大きな役割を果たした。「プロジェクトのメンバーと化成品開発研究部内の他のメンバー、さらにテレビ会議で営業、製造の担当者も加わり、総勢10名ほどで、懸案事項について自由に意見を述べ合う機会を設けています。促進会議は必要に応じて随時開催しますが、平均すると2ヶ月に3回、毎回、5時間程度の会議になります」(藤井)。入社年次や担当など関係なく、誰もが自由に意見を述べ合う中で、「いろいろな人の意見やアドバイスを聞くことができ、それによって新たな発想が生まれ、ブレークスルーにつながることも数多くありました」(鴨井)。

研究に終わりはない。ひたすら良いものを

「研究、製造、営業、顧客が一体となって完成させた」(鴨井)という開発プロジェクト。その努力の積み重ねは、見事に5年後でも通用する製品として実を結んだ。それはいってみれば今後数年間、日本カーバイド工業の屋台骨を支える価値を生み出したということだ。リーダーの藤井を始め、3名のメンバーは「ほんとうによく頑張った」と口を揃える。会社の期待と注目を集めるプロジェクトに参加するということは、それだけ責任も大きく、プレッシャーも並大抵のものではないだろう。「でもその分、自分たちが成し遂げた成果を振り返って見ると、何物にも代えがたい大きな充実感を覚えます」(鴨井)。だが、実は彼らのミッションは、これで終わったわけではない。「プロジェクトという形は取っていませんが、すでにさらなる高性能化とコストダウンに向けた研究がスタートしています」(藤井)。研究に終わりはない。ひたすら良いものを作り続けていく。日本カーバイド工業の未来を創る研究者たちの挑戦は続いている。

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