海外ステッカー工場立上げプロジェクト

主に二輪車・四輪車メーカー向けにステッカーの製造・販売を行うフィルム事業部では、取引先の海外進出と足並みを揃えて、海外での現地生産体制を強化してきた。現在はタイ(THAI DECAL CO., LTD.)、ベトナム(NCI(VIETNAM) CO.,LTD.)、インドネシア(PT ALVINY INDONESIA)、中国(恩希愛(杭州)化工有限公司)の4ヵ所に生産拠点があり、2013年には新たに成長し続けるインドでも工場が稼動予定だ。これらの立上げに黎明期から関わって来た2人の開拓者の足跡を追った。

専攻分野も国境も超えたモノづくり

日本カーバイド工業の海外進出の歴史は、1988年のタイの2つの工場建設から始まる。その一方のエレクトロ・セラミックス・タイランド社(ECT)の工場建設・立上げのため富川哲志は同年より現地に赴任、翌年には工場が完成し、セラミック基板の製造を開始した。数年後、濱田豊はそのECTに出向し、初めて海外工場経営に携わった。実はこの2人は同じ高校の先輩後輩であり、入社当初から師弟関係のような関係ができていた。「私は電気屋、富川さんは機械屋でしたが、2人とも自分の専門にはこだわらず、富川さんからは『機械の設計図ぐらい自分で描け』と言われ、ボーダーレスに取り組む姿勢が今に生きていると思います」(濱田)。富川はその後、中国の反射シート工場の立上げなどを手がけた。濱田はステッカー工場の新設・増設のため、タイ、ベトナム、インドネシア、そして現在のインドと海外での当社の事業発展に貢献してきた。特に2005年以降は海外でのステッカー事業が急成長を遂げ、濱田はアジアと日本の往復を繰り返すようになった。

ラインを止めずにラインの拡張を行うという挑戦

濱田がベトナムに向かったのは現地工場の第3期増設工事の始まった2007年。ベトナムへは日本の2輪メーカーとタイミングを合わせて進出し、品質、コスト、ボリュームの要望に柔軟に応えて来た。ステッカーはミクロン単位の異物が混入すると不良品になってしまうため、印刷工程をクリーンルーム仕様にしている。同業者でそこまでの体制を整えている企業は少ないが、そうした品質確保への姿勢がお客様からの信頼の基盤となっている。第3期工事はこのクリーンルームのスペースを生産量の拡大に伴い、2倍に拡張するというもの。しかし問題は、その工事を製品の生産を止めることなく完遂しなければならないことだった。この工場がストップすることは、お客様の製品出荷を止めることを意味する。「工場のラインを止めずにラインの拡張を行うなんて誰もやったことがない前代未聞の工事。無謀とも言える要件の中で、何とかやり遂げる道筋を、知恵を絞って考えました」(濱田)。

複雑な工程、プレッシャーとの闘い

今回のクリーンルーム拡張工事と並行して、既存のクリーンルームの改善工事も実施しなくてはならなかった。しかも生産を続けるには工程と工程の間を塞ぐわけにはいかない。そこで既存のクリーンルームを維持しながら、その隣りで工事を進め、ある程度できあがった段階でそれを既存のラインに追加して囲っていく。その後既存のラインに手を入れる作業を完了後、最終的に一本のラインにして稼働させた。通常の拡張工事は2回の工事で終わるところを3回に分けて工事を行い、かつクリーンルームの維持という部分で濱田は相当なプレッシャーを感じ、神経を消耗した。